県の取組なのに全国から参画OK!
オープン化で地域住民の暮らしに本当に役立つロボットを。

「さがみロボット産業特区」の本気度がこれだけ違う。【上】

 地方自治体などが行う産業振興についてどのようなイメージをお持ちだろうか?自治体が企業誘致を促進させるために、区域内に登記した法人に対して補助金や税の免除、インフラの整備された工業団地などの優先的な斡旋などだけを頭に浮かべる方が大半ではないだろうか?私も不勉強ながらその程度の認識しかもっていなかった。しかし今回のインタビューで紹介する「さがみロボット産業特区」の取組は一味もふた味も違う。 
特区のメリットを該当地域だけにとどまらず広く全国の企業にオープン化するという取組だ。 研究室の中での研究開発という、言わばロボット開発の「入口」への支援ではなく、特区でのロボットの実用化を地域住民の安全・安心につなげる「出口戦略」へ。その最先端の取組について神奈川県産業労働局産業部産業振興課さがみロボット産業特区グループ主任主事、清水一憲氏のインタビューを2回にわたってお届けいたします。

 

神奈川県産業労働局産業部産業振興課さがみロボット産業特区グループ主任主事
清水一憲氏(写真)

 

徹底した「出口戦略」への転換。


 
それではまずはじめにさがみロボット産業特区の概要についてお伺いしたいと思います。
  
【清水氏】
 まず特区の区域ですが、ちょうど県の中央部になります。北は相模原から南は湘南といわれる地域です。たくさんの企業が集積していることで有名な横浜、川崎地域にも負けないくらい高い技術力を有した中小企業がたくさん立地しております。さらに大企業の研究施設などもあり、研究開発人口が非常に多い。
 そこに着目してロボット産業で活性化できないかというところがスタートになります。
次に、この地域にさがみ縦貫道路と呼んでいますけれど、圏央道の一部ですね。これが開通いたしまして、いっそう経済活動のポテンシャルが高まりました。それをきっかけに地域経済も活性化していきたいというのが狙いです。
 
最終的に目指すゴールはどのようなところなのでしょうか?
 
【清水氏】
  まず目標としては「生活支援ロボットの実用化を通じた地域の安全・安心の実現」があげられます。これはどういうことかと申しますと、実用化--つまり単にロボットを製作するというだけでなく、その先にはちゃんと販売できて、なおかつ県民の皆様のお手元に普及して、それで安心して暮らせる世の中になるというところまでを目指したいと思っています。
 
明確に地域住民の役に立つというゴールを設定しているところが通常の産業特区とは少し異なるわけですね。
それでは次に具体的な活動についてお伺いしたいと思います。
 
【清水氏】
 はい。ひとつめの柱は研究開発や実証実験の促進、つまりつくるのをお手伝いしますよという話です。
 それから二本目の柱としまして、たくさんの企業様にお集まりいただいて、みなさんが技術連携などを深めながら開発、実証がしやすい環境を整備して産業の集積を併せて高めていきたい。まずはこのふたつの柱を中心にはじめました。
 さらにそのあと、これをさきほどの目的である地域の安心・安全と言ったテーマにつなげていかなければいけませんから、現在は普及啓発活動にも力をいれて取り組んでおります。
 特区と言うのは国に申請し、指定を受けて始めるのですが、それだけにとどまらず、創意工夫を重ねながら県が独自に取り組んでいるというところですね。
 
なるほど、ではその核心である創意工夫にあたる部分をぜひ教えていただけませんか?
 
【清水氏】
 まず、特徴的なところとしましては徹底的な「出口戦略」と言うところになります。
 行政がなにかの開発を支援すると言うと、基礎的な研究から補助金を支給して取り掛かる、ということをイメージされる方も多いと思いますが、それだとなかなか研究の成果が県民のお手元まで届くところまではいかないだろうと。
 ロボットを作り始めている方々がたくさんいらっしゃるのもわかっていたので、逆に行政として一番最後の出口にあたる商品化のところを支援したほうがよいのではないだろうか?と考えました。
 

まず現場のニーズを県が提供することで企業側もじっくりと開発に取り組める。


 
これまでの行政サポートのイメージだと研究開発の補助金であるとか、土地の提供であるとかが企業支援の中心であったけれども、こちらでは製品化につながるところまでスクラムを組んでがっちりやっていきましょうということですね。
 
【清水氏】
 はい。試作品のような実際に形がある製品を介護施設であるとか病院であるとか実際の活用現場に持ち込んで使いやすいかどうかを検証していただくとか。もちろん一から作るような取組もしているのですが、その場合もメーカーさんのシーズで作り始めるのではなくて、県が現場の声を集めて、こういうロボットであればお金を出してでも欲しいよというニーズに合わせて開発を始めることにしました。
 
マーケティングや商品企画開発に当たる部分からすでに支援が始まっているのですね。いいですよね。企業側としてもこのような商品があればぜひとも購入したいと言う購入の裏づけがとれていれば安心して開発に取り組めます。
 こちらはアンケートをしながらニーズを集めたのですか?それとも実証実験をしながらいろいろな声を吸い上げた?
 
【清水氏】
これは特区を始める前に現場の方々にお話をお伺いしまして、こういうニーズがあると把握させていただいたものを活用しています。
 
なるほど、じゃあヒアリングを重ねたと。
 
【清水氏】
 改めてヒアリングしたというよりも、もともと10年以上に渡る県のロボット産業振興の積み重ねがこちらにはございます。特区が始まる前からロボットの実証実験の取組みも少しづつやっておりましたので、その成果といえるでしょうか。
 
 神奈川県が続けてきた豊富な取組の蓄積を今回の特区で役立てたわけですね。
 それ以外にはどのような特徴がありますか?
 
【清水氏】 
 こちらも先ほど出ました「出口戦略」の延長線上の話になりますが、ロボットを作るだけではなくて、その後、普及する段階でもお手伝いさせていただくということですね。
 たとえば、なんとかこのロボットをもっと低価格化できないか?とかそういうお手伝いになります。
 
 そちらは興味深い試みですね。やはりパートナー企業を紹介したりとかそのような形になりますか?
 
【清水氏】
 そのようなマッチングの支援も進めてはおりますが、他にも、たとえば介護ロボットであれば介護保険の適用を国に提案させていただいたりとか。特区で開発されたロボットに関しましては導入支援の補助金も始めました。
 
ああ、なるほど。そこの部分は行政ならではの方法ですよね。しかし異なるのは
従来は研究・開発に向けた補助金だったものを、導入支援に回すという部分ですね。
  

全国から参画企業を募るオープン化で、企業にも住民にも特区にもメリットを。


 
【清水氏】
 それからもうひとつの大きな特徴としましては、開かれた場の提供と言うことになります。特区の中とか県の中だけで進めるのではなくて、門戸を開いて少しでもたくさんの方にご参加いただきたいと。
 
 多くの自治体の場合、その特区の中に企業が立地していないとメリットが享受できないというイメージを持ってしまいますが、そこをあえて全国の企業にむけてオープン化したと。
 
【清水氏】
 そうですね。あえて限定せず、全国から参加していただきたいと。ひいてはそれがこちらのさがみロボット産業特区の知名度のアップにもつながるということですね。
 特区で実証実験をしていろいろお手伝いもして、それを各企業が売り出すときに、あの「さがみロボット産業特区」のサポートを経て開発されたんですよというのがある種のブランドイメージとしてビジネスのプラスにつながるというところまで持っていきたいと考えています。
 
 たしかに成功事例が増えていくと「なるほどこのロボットは特区のさまざまなサポートがあってできたんだね」という部分に説得力も増します。
 
【清水氏】
 特区の知名度が上がることが企業活動のプラスにつながるのであれば、もうどんどん我々の特区をPRしていくことが必要かなと。
  
 じつは次の質問で、特区に進出した企業が得られるメリットについてお伺いしたかったのですが、わざわざこちらの特区に立地しなくてもよいという話になってしまいました(笑
 
【清水氏】
 ええ。もちろん神奈川県からすると立地していただけるとありがたいのですが(笑)
最初からそれを企業さんに求めるのではなくて、まずは特区の中でロボット実証実験をしてくださいと、そこにメリットがありますよと。それでこの地域に興味をもっていただいて将来的には立地していただければと。
 実証実験の際には、もちろん特区ですからさまざまな規制緩和もございますし、それから県のいろいろな支援スキームを使いましてサポートをさせていただきますと。
  
なるほど。まずは実証実験にオープン参加していただきたいと。 
県内の企業にはそれとは別にまたメリットがあるわけですか?
 
【清水氏】
 実証実験にはロボットの現物を持ってきていただく必要がありますし、特区内の市町などの紹介で支援を始めたケースもありますので、実際には近くの企業さんの方が参加しやすいと思いますね。
 

(第一回目のエピローグ)
特区と銘打ってながら、全国の企業が参画できてメリットも多いさがみロボット産業特区のオープン化の考え方はいかがでしたでしょうか?後半の2回目はその具体的な3つの取組についてお話をお伺いします。

(続く)
 

【問い合わせ先】
さがみロボット産業特区
http://sagamirobot.pref.kanagawa.jp/